JRAの陰謀
「まぐれでソ〜リ〜まぐれでソ〜リ〜おおきな声じゃ言えないが」「いまのは完全にマグレですぅ」。聞くのもハズかしい、今秋のJRAのCMでの1コマである。1999年秋のG1シリーズのテーマは、ずばり「万馬券」。秋の第一弾、秋華賞は、9万円台の万馬券、第二弾の天皇賞・秋も、やはり万馬券。ここで一つの疑問が沸いてくる。「仕組んでないか?JRA」。天皇賞・秋を振り返り、この疑問が事実であることを検証してみよう。
万馬券を発生させるには、いくつかの手段がある。もっとも簡単なのは、上位人気を消すことである。通常、強い馬ほど人気になる。ここである情報操作をすることで、強い馬の人気を下げ、弱い馬の人気を上げることができる。すなわち、上位人気を消すことが可能となる。強い馬=スペシャルウィークであり、弱い馬=セイウンスカイとその他の馬、ということになる。第一のポイントは、スペシャルウィークの人気を下げることである。
スペシャルウィークの人気を下げただけでは、万馬券とはならない。よって、ヒモとなる馬の人気も下げる必要がある。だが、実力がなければ、スペシャルウィークの2着となることも困難である。そこで、「実力はあるのだが、イマイチ、人気のでない馬」の出番となる。ステイゴールドである。これが、第二のポイント。
弟三のポイントとしては、3着以降の馬の人気を上げること。つまり、連に絡まない馬の注目度を上げることにより、スペシャルウィーク、ステイゴールドの人気が下がることになる。
では、JRAが行った、万馬券を発生させるための方法を検証していこう。
まずは、スペシャルウィークの人気を下げること。これは、簡単なことであった。1つ目は、天皇賞・秋のトライアル戦である、京都大賞典を7着という順位で敗退。もちろん、武豊の手腕によってである。2つ目は、翌日の新聞等での報道。それまでスペシャルウィークは、調子の悪いときでも、4着以下がなかったことを強調した。3つ目は、「スペシャルウィークの力が衰えた」という情報の浸透。宝塚記念での3馬身差の完敗。あの時点で、スペシャルウィークのピークが過ぎた、という予想屋が多く出てきた。カンのいい人ならお分かりかと思う。7月の宝塚記念もJRA、武豊によって仕組まれていたことを...そして、調教での格下馬との併せ馬で差し返されたり、武豊の弱気発言、調教師のJC目標宣言、予想紙揃っての無印攻撃と、小技大技を駆使した結果、4番人気を手に入れる。
ステイゴールドも、同じ京都大賞典を予定通りに大敗する。だが、この馬に関しては、これ以上の小細工はいらない。本番で、人気が出ることなど、もともとあり得ないことなのだから。
3着以下の馬の人気を上げる。ある意味、最も困難だったのがこれであろう。まずは、セイウンスカイ。順調ならスペシャルウィークに次ぐ2番人気となるだけあり、実力的には遜色ない。同馬は、ステップレースとして、札幌記念を選択する。牝馬初の天皇賞制覇を遂げた、エアグルーヴと同じローテーションである。そして、天皇賞・秋と同じ2000M。ここでセイウンスカイは、いつもの先行策をとらず、後方待機の4角マクリ、という戦法をとり圧勝する。モロかった春とは大変身だ。自在のレースができるようになり、展開面での幅ができた。予想屋も大絶賛だ。これが功を奏したのか、当日は押し出されたカタチとはいえ、堂々の1番人気となる。しかし、札幌記念→天皇賞・秋というローテーションは、中途半端な間隔となってしまい、調整が難しい。保田師は、これを理由とし、まんまと調整に失敗する。さらに、ゲート難のある同馬に対し、発走時のゲート入れの際に「横入れ」を行うという徹底ぶり。「最も安定している馬」という評価とは逆に、実は「最も不安定な人気馬」ということであった。
距離面、展開面での不利は明らかなメジロブライト。京都大賞典での鋭い差し脚は見せたが、普段はおとなしい河内が珍しく強気な発言をしたことにより、にわかに人気を取り戻していく。最終的には3番人気。上々であろう。
春の3強に対して、新勢力はどうか。スペシャルウィークを大敗させた京都大賞典において現れた。ツルマルツヨシである。この夏最大の上がり馬。2000Mを得意とし、あの強烈な差し脚は、見るものにインパクトを与えた。同馬がシンボリルドルフ産駆であることも、ドラマとして見たときにも有利となった。ご存じの通り、シンボリルドルフは天皇賞・秋を勝っていない。そして、トウカイテイオーも同様である。つまり、偉大な父の成し得なかった夢を果たす、と新聞等で大いにあおった。そして、「混戦に強い藤田」を強調した。タケノベルベット、フサイチコンコルド、シルクジャスティス、マサラッキ...なぜか、人気薄の馬でしか勝ったことがないことは伏せられていた。そのかいあってかなくてか、堂々の2番人気を獲得する。
最も、天皇賞・秋に直結するレースとして有名な毎日王冠。このレースを制したのは、怪物グラスワンダー。そのグラスワンダーにハナ差と迫ったのが、メイショウオウドウ。4歳時には「逸材」と騒がれた馬である。グラスワンダー的場の手の抜き方の絶妙さもあり、惑星の最有力の候補となる。6番人気。
安田記念にて怪物グラスワンダーを破り、一躍全国区となったのがエアジハード。距離不安に加え、休養明けでの出走。しかし、これが不気味さを演出したカタチとなったのか、5番人気。
その他、4歳牝馬初の優勝を目指すスティンガー、4連勝の勢いをここでもクリスザブレイヴ、まだまだ現役ホッカイルソー、復活なるかキングヘイロー、ダイワテキサス。これらの後、わがステイゴールド、なんと12番人気。
結果的に、4番人気−12番人気で決まり、万馬券となる...問題は、ダービー馬であり天皇賞馬である4番人気馬と、宝塚記念2着・天皇賞2着・3着の実績のある12番人気で決まったことだ。あまりにも、人気と実力の差が離れていよう。
情報操作により、ここまで配当を上げることができる。今回の天皇賞・秋は、その、いい例であったと思う。人気に惑わされることない、確かな目を養っていかなければなるまい。って、それは無理でしょ。調教の状態は、トラックマンや予想屋の言うことを参考にするしかないし、調教師や騎手の言葉は信じるしかないしね。つまり、人気というものが、いかに儚く、モロいものだということを認識しましょうということです。人気というものは人がつくるものだし、そういうものだから人が故意に作ることも可能なのです。人気のある馬=強い馬ではなく、人気のない馬=弱い馬でもないということです。ただし、強い馬=人気のある馬ということは有り得るし、弱い馬=人気のない馬ということも有り得ます。よって、実力以上に評価されているか、実力の割に評価が低いか、これらを見極めれば、おいしい馬券もとれるでしょう。きっと、ね。