人はいかにして競馬にはまるのか

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人はどのようにして、競馬にのめり込んでいくのか?

ここでは、さまざまなパターンから、この問題について考察してみましょう。

なお、ここで取り上げるのは、あくまで、競馬にはまった人たちについてです。ギャンブル全般を愛し、その一つとして競馬があるという方については、除外させていただきます。

まず、競馬をはじめるきっかけについて、インタビューしてみました。

 

【Hさんの場合】

 彼にドライブに誘われたので行ったら、競馬場でした。それで、パドックを見てたら、人気薄の黒い馬が妙に気になって、何度も何度も「あの馬綺麗!!」なんて言ってたんです。馬券を買うつもりはなかったのですが、彼が内緒で買っていて...そしたら来ちゃったんです、その黒い馬が。「あぁ、一生懸命に馬を見てたら、勢いなんかがわかるもんなんだなぁ。」って、その時思いました。それからですね、私が競馬にのめり込むようになったのは。好きな馬はオグリキャップです。生きる勇気みたいなものを与えてくれましたよね。90年の有馬記念でも「オグリの背中が走りたいと言っている。」とポツリと言ったんです。そしたら来ましたよね。女のカンというか、あの時のオグリは走りたそうに見えたんです。

 

勘違いから入る、典型的な例ですね。この人の不幸は、はじめての競馬で馬券をとってしまったことです。また、目をつけた人気薄の馬が、偶然、来てしまったことも、勘違いに拍車をかけました。その馬に目をつけたのは、まったくの偶然であり、その馬が勝ってしまったことも偶然です。勢いがわかったと言っていますが、はじめて競走馬を見る素人に、勢いがあると感じさせたのであれば、人気薄のはずがありません。また、一生懸命見たとも言っていますが、パドックにいる人たちは、全員、例外なく一生懸命です。オグリのときも、同様だったのでしょう。

 

【Nくんの場合】

 ボクが競馬にどっぷりつかるようになったのは、友人のTクンに勧められたのがきっかけです。Mさんにも教えていただきました。あの人は、一口馬主でもありましたね。Tクンに誘われて行ったダービーでは、アイネスフウジンが勝ちました。「ナカノコール」が印象的でしたね。あとで聞けば、競馬場にあのようなコールが起こるのは初めてとのことでした。歴史的な瞬間に立ち会えたことは光栄に思っています。最初のころは、競馬という「お祭り」に参加したかったのだと思います。事実、馬券もあまり買っていませんでした。でも馬券を買っていないと、参加してるって感じにならないでしょ。馬券の買い方は、枠連の総流しです。ゾロ目を含めて500円で8通りというパターンです。馬連だと頭数が多くて、総流しはできません。今のところ枠連派です。単勝も好きですよ。荒れると思ったレースでは、3点くらい買います。ボクにとっての競馬とは「レースにお金を賭けることによって、自分もレースに参加したい」ということにつきます。これからも「参加」して、大いに感動したいと思います。

 

この人は、まわりの環境が悪かったのでしょう。友人のTクン、Mさんは、見受けるところ、かなりの競馬打ちのようです。誘われるがまま競馬場に行ってしまい、なんの疑問も感じることなく馬券を買ってしまう、自己主張というものがなかったのでしょうか。本人も自覚していますが、参加することがすべてのようです。競馬で一儲けしてやろう、という意気込みなどは感じられません。馬券の買い方も、赤字覚悟。とにかく、競馬を見る、馬券を当てることを重視しているようです。

 

【Iクンの場合】

 初めて競馬場に行ったのは、友人のつきあいででした。それまでは興味なかったんです、競馬には。ところが、そこで大きなショックを受けてしまったんです。ああ、こんなにも様々な人がいるんだってことに鳥肌が立ってしまった。それから、ものの見方は一つじゃないんだなってことも、本当に心の中で深く感じたんです。実は、このとき失恋したばっかりだったんです。でも、自分が抱えている問題が、角度を変えれば、そんなに大変なことでもないって思えたんですね。その瞬間から、本当に気が楽になったんです。だから、少なくともボクにとっては、競馬を知って、生きる勇気が湧いたというか、生きることが気楽になってきたんです。競馬のいいところは、遊び方も自由だということ。賭け方も額も自由。最初のうちは、誰かに教わったり、読んだりしてればいいと思うけど、慣れてきたら、自分のやり方を捜すのがいいんじゃないかな。本当にその人のやり方を見つけることが、競馬の楽しさの第一だと思う。

 

いますねぇ、こういうふうに「競馬を科学する」輩が。データや血統を科学するんならいいのですが、「競馬の楽しみ」を語られたら手に負えません。おもしろいことは、他にもあると思うのですが、たまたま競馬に興味を示してしまったのですね。しかも、強引な理由をつけて。競馬ブームのころだったのでしょうか。とにかく興味の対象が、競走馬や馬券ではなく、競馬場に集う人々というところが変わってます。

 

【Fさんの場合】

えっとぉぉ、わたしはぁ、カレシが行くって言うしぃ、キムタクも宣伝してるしぃ、まぁ見にいってもいいかなぁ、って思ったからでぇぇ、さっきぃ、カレシが買えっていったの買ったんだけどぉ、なんかぁ、ヤバい感じなんだよねぇ。

 

.....次、いってみましょう。

 

【Rくんの場合】

競馬にはまった時期というのは、覚えてませんね。あえて言えば、大学のとき、友人と中山競馬場に初めて行ってからですかね。それ以前にも、競馬は見てました。日曜になると、親父がTVで競馬中継見てましたから。GIになると、親戚のおじさんに馬券を頼んだりもしてました。ノミ屋なんですよ、そのおじさんは。初めての競馬場で、ボロ負けしました。そのときっていうのは、くやしくてくやしくて、夜も眠れませんでした。以前にも負けたことはあるんですが、競馬場で負けるとダメージが大きいんですね。それで、この次は勝ちたいと思い、今以上に競馬を知ろうと思いました。奥が深いんですね、競馬っていうのは。知れば知るほど、まだ知らないことが出てくるんですよ。それからはどっぷりです。もう抜け出せないでしょうね。

 

競馬にはまる要素は、潜在的にもっていたようです。それが、競馬場へ行ったことで、目覚めてしまったのですね。もがけばもがくほど、はまり込む、競馬とはあり地獄のようなものなのでしょうか。

 

【Kクンの場合】

大学のサークル仲間と行ったのがきっかけかな。手軽にできるからね、道具とかも必要ないし。世の中、競馬ブームだろ、だから押さえておこうかと思って。仲間が何人か都合がついて、天気のいい日には競馬場へ行くよ。やたら血統とかデータとか持ち出すやつはキライだね。あくまでカン、ひらめきで馬券は買うよ。名前の語呂合わせや、誕生日の数字なんかでも買うね。それでも、けっこう当たるよ。この前なんか、20倍を200円とったよ。意外と、才能あるんじゃないかな。けっこう、はまっちゃってるよ。

 

一昔前であれば、このような人たちは競馬場にあふれてましたね。団体行動を好み、自分の買った馬券を公開する。100円単位の馬券が泣かせます。おそらく一人では、競馬場に行かないでしょう。

 

 では、これらのインタビューをまとめてみましょう。

インタビューを聞く限りでは「競馬場へ行った = 競馬をはじめた」という傾向にあるようです。そして、競馬場へ行ったことで、何かがあった。Hさんは勝ち馬を予感した、Nくんはナカノコールを聞いた、Iクンはまわりに様々な人がいた、Rくんはボロ負けした。この「何か」が、彼(女)たちを、再び競馬場へ誘ったのでしょう。また、人それぞれ目的が違うことも、見逃してはいけません。

 馬をみる。これは、かなりまっとうな理由です。好きな馬を見るために競馬をする、ということです。馬を好きになる理由はいろいろありますが、儲けさせてくれた、毛色が綺麗(栗毛、芦毛が人気)、名前がかわいい、などがあります。また、「次はやってくれる」という期待感を抱き、その馬のファンになってしまう場合もあります。ナイスネイチャ、ロイスアンドロイス、カリブソング、ホワイトストーンなどです。こいつらにかかわるとロクなことがありませんね。一花も咲かせずに引退なぞされたら、目もあてられません。子供に期待したいところですが、こいつらの成績じゃ、種牡馬になれるかどうか...なれたとしても、いい肌馬を当ててくれんだろうなぁ。やはり、好きになるなら強い馬、が無難ですね。馬券的な妙味は少ないけれど、老後も安心、息子や娘、はたまた孫の代まで楽しめる!!って話がそれてきたようなので戻しますが、強い弱いにかかわらず、応援したい馬が現れた時点ではまっているのです。

 競馬に参加する。スポーツ観戦に近いことなのかな?で、観戦料=馬券を払うのですね。お祭りと言われれば、GIなんぞは、まさにその通りって感じです。野球は9回、サッカーは90分ですが、競馬なんて2、3分しかかからないんですよ。スプリンターズSなんか、1分足らず...だからこそ集中できるのかもしれないですね。真夏の花火のように。

 人を見る。競馬場には様々な人がいます、ってあたりまえや。競馬場に限ったことじゃないぞ。ただ、金がからむ世界なんで、変わった人たちは目につきますね、たしかに。競馬にかかわる人たちというのは、もちろん、競馬場に馬券買いにくる人もそうですが、馬主、騎手、調教師、助手、生産者から、馬券売場のおばちゃんまで、様々です。そういう、たくさんの人の想いを乗せて馬は走る、わけではないのがおもしろいですね。馬に人間の言葉はわかりません。ただ、身近で世話をしている人たち(助手とか)の気持ちが伝わることは、あるんじゃないかと思います。そのへんを突き詰めていくと、はまるのも無理ないですね。

つきあい。そうです、つきあいは大事です。

勝つこと。そうです、負けるために競馬してる人はいません。競馬には必ず勝つ馬がいます。そして、レースには必ず当たり馬券が存在します。このレースははずれ、当たり馬券はないよ〜ん、なんてことはありません。宝くじなどと違い、自分で馬券を自由に選択できるのです。では、勝つとはどういうことでしょうか。とにかく馬券を当てること収支でプラスになること万馬券をとること。これ以外にも、馬券ははずしたけど満足、ということがあります。人気薄の馬に目を付けて、その馬がいい追い込みをして3着に食い込んだ。「おれの目にくるいはなかった。」とか言うんですよね。では、これは勝ちなのか負けなのか。まわりから見れば負けですが、本人は勝ちだと思うはずです。「ケンカは自分が負けたと思わない限り勝ちだ」という言葉がありますが、それに通じるところがあるのかもしれません。競馬用語に「負けてなお強し」というのがありますが、あまり関係ありませんね。これとは逆に、馬券はとったのに負けと思うときがあります。本命をはずし、押さえ馬券が的中した場合です。難しいものですね。

サークル活動。勝手にやってください。やめろとはいいません。ただ、売場の前でモニターを見ている人を並んでいると勘違いして、「なんだよ、並んでないじゃん。」とかいうのはやめてください。おもしろすぎます。

[結論]

美しくも力強いサラブレッドが、その背景に感動の人間ドラマを見せつつ、心がひとつとなった大観衆の前を駆け抜け、うまくいけば金が儲かる。

 

だらだらと書いてきましたが、これにつきるでしょう。だから、人は競馬にはまるのです。


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