第59回桜花賞回顧
普段ならレース回顧などやらないのだが、今日は気分がいいのでやってしまう。 今回の桜花賞、最大のポイントはスティンガーの収拾にあった。阪神3歳牝馬Sからの直行。3歳牝馬チャンピオン、前例のないローテーションである。私は迷うことなく、捨てた。捨てた理由としては、1.馬主体のローテーションではない、2.スティンガーはそれほど強くはない、の2点である。
阪神3歳牝馬Sの後、しばらくしてスティンガーのローテーションが発表された。それは、トライアル戦を使うことなく、桜花賞を目指すというもの。もちろん、スティンガーを管理する藤沢師によって。ここで一つの疑問が。なぜ、ぶっつけなのか?真意は定かではないが「調教の常識を変えたい」というようなことを聞いた。強い馬なら、あえてトライアルを使う必要はないということか。たしかに、トライアルを使う/使わないは、本番で能力を十二分に発揮できればどちらでもよいのだろう。無理使いだと判断すれば使わないほうがよいだろうし、一絞りしたい場合、実戦のカンを取り戻したいときなどは使ったほうがよい。しかし藤沢師は、トライアル戦という調教の一つの手段を早々と放棄した。これは馬主体の考えではない。すなわち、馬の調子にあわせたのではなく、あくまで自分の理論にあわせた。これは言い方は悪いが、ある意味スティンガーを実験に使うということだ。藤沢師にとってのギャンブルであったわけだ(それなりの勝算があってのことだろうが)。スティンガーを買うということは、藤沢師のギャンブルにつき合うことに等しい。ふんっ、そんなバカバカしいギャンブルにつき合ってられるかい。
しかし、藤沢師につき合うとか、馬主体のローテーションでないとか言ったところで、そんなもん関係ないほどスティンガー強かったら買うしかない。ここで、もう一つの疑問。スティンガーはそんなに強いのか?ということ。TVで予想屋(予想家ではなく、あえて予想屋)が言っていたのだが「スティンガー以外は横一線」だそうだ。何を根拠にしているかというと、阪神3歳牝馬Sでの勝ちっぷりだということは、安易に想像できる。たしかにあのレースでのスティンガーは強かった、というか強く見えた。2着にはエイシンレマーズ、3着には不利があったゴッドインチーフ。問題はゴッドインチーフ。もし不利を受けていなかったなら2着はあったのではないか。そう考えると、スティンガーとの差は2馬身ちょっと。今回、順調に使われてきたゴッドインチーフに対して、休養明けのスティンガーとでは、2馬身の差は詰まると見る。とすると、スティンガーはゴッドインチーフよりやや強い馬、となる。また、別路線を歩んできた馬、フサイチエアデール、ハギノスプレンダーなどは、少なくともそのレースぶりから、ゴッドインチーフと肩を並べる実力と判断できる。以上からスティンガーは「不安要素を抱えた最有力馬」となる。素質、能力などは抜けた存在かもしれないが、今回のレースに限っては、絶対ではない。他の馬にも、十分に逆転の目はある。
レースは周知の通り、スティンガー陣営には最悪の形で終わった。スタートでの出遅れが、すべての原因のように言われているが、出遅れがなくとも似たような結果に終わったのではないかと思う。明らかに道中の行きっぷりが悪く、馬ごみの中からも抜け出すことができなかった。やはり出遅れを含め、実戦から遠ざかっていた影響であろう。実際には違うかもしれないが、そう言われても仕方がない。誰の目にも明らか(であろう)な、非常に分かりやすい結果であった。天才少女といえども、かなり厳しいレースだったに違いない。ここで声を大にして言う。スティンガーの負けは人災だ。藤沢師のエゴの犠牲になってしまったのだ。
去年の秋、エアグルーヴが未勝利に終わったときも人災だと思った。馬にあわせたローテーションを組まず、調教師の理論など、人にあわせたローテーションでは結果は出ないと思ったからだ。結果が出た場合、それは馬がエラいのだ。今回のスティンガーの場合も同じだ。もし、スティンガーが勝ったなら、そのときはスティンガーがエラいのだ。 と、まぁ固いこと言ってみたが、競馬とは馬があって人がいて、そのどちらが欠けてもダメ、だということを再認識させられた。そう言った意味では、非常に有意義なレースであったと思う。
最後に、プリモディーネについて書く。デビュー2戦目にして重賞制覇。しかもゴッドインチーフを完封。「素質」だけならスティンガーにも劣らないだろう。休養明けだったチューリップ賞でも、確実に末脚を伸ばしていた。調教の動きも抜群。にもかかわらず、当日の馬体重は増えていた。これは、調子のよい証拠。不安は外枠と鞍上。だが阪神改修後、外枠の不利はあまりないらしい。鞍上だが、こればっかりは分からない。が、つつまれる心配もない枠だし、多少チョンボしても、今のプリモディーネの出来であれば挽回可能であろうという希望的観測。で、自信の本命とした。対抗には、完成度のフサイチエアデール。単穴には、未知の魅力のトゥザヴィクトリー。