年度代表馬決定
2000年の年度代表馬が決定しました。大方の予想通り、満票でテイエムオペラオーに決定です。満票での決定は、あのシンボリルドルフ以来だそうで、荒れに荒れた去年とは違い、記者の人たちも楽だったのではないでしょうか。ただ、イマイチ盛り上がりに欠けた JRA賞だったと思っているのですが、いかがでしょうか。
盛り上がりに欠けたのは、テイエムオペラオーで間違いないからではなく、テイエムオペラオーで間違いない状況だったからだと思っています。もちろん、そういう状況を作り出したテイエムオペラオーが強かったのですが、そういう状況を作り出した他の馬も弱かったのではないでしょうか。古馬G1を5連勝など、その馬が強いだけでは、到底達成できない偉業のはずです。それを、あっさりやってのけるなど、よほど強い馬でないと無理ですが、それでも難しいと思います。馬は生き物ですから、調子というものがありますし、天候や展開にも左右されます。それに、運というのもあります。これらが揃ったところでも、まだ難しいと思うのです。しかし、テイエムオペラオーは達成した。これは、相手に恵まれたというプラス要素があったからではないでしょうか。
テイエムオペラオーが、単に運のいい馬ということではありません。テイエムオペラオーは本当に強い馬だと思います。でも、すべてのレースがベストだったわけではありません。完璧に勝ったレースというのは、春の天皇賞、そして秋の天皇賞の2つでしょう。宝塚記念とジャパンカップは紙一重だったし、有馬記念に至っては、完全に和田騎手のミスです。それでも勝てた理由は、やはり他の馬がだらしなかったとしか言いようがありません。馬券の売り上げも落ちたように、テイエムオペラオーの独り舞台、他の馬の出番がなかったってことですね。
ここからは完全に私の独断なんですが、去年、そして今年も面白くなさそうです。一昨年は面白かったですね。エルコンドルパサーがいて、国内ではスペシャルウィークとグラスワンダーが真っ向勝負をしていた。スペシャルウィークは、エルコンドルパサーとグラスワンダーには先着できなかったんですが、だからといってスペシャルウィークが弱いとは思いません。グラスワンダーだって、格下相手に、あっさり負けたりもしていたし、エルコンドルパサーだって、結局、凱旋門賞は獲れなかったんですよ。つまり、負けることによって、強さというものが強調された感じです。こんな強い馬でも負けるものなのか、などという安心感みたいなものがあったわけです。オグリキャップやトウカイテイオーの復活劇など、負けがない限りあり得ないハナシなのです。勝ち続けることなど不可能に近いことだし、もしそれが出来るとしたら、それは嘘臭いという錯覚を起こしてしまいがちです。
ライバルがいない、というのも問題だったはずです。一昨年は言うまでもなく、サクラローレルにはマヤノトップガン、マヤノトップガンにはバブルガムフェロー、バブルガムフェローにはエアグルーヴなど、勝ったり負けたりと、そうしながらタイトルを獲得してゆきました。だからこそ価値があるものと感じるのです。テイエムオペラオーならば、強いライバルがいたとしても、それらに勝って、G1を全勝していたかもしれません。それくらい強い馬だということは認めています。だからこそ、惜しいなぁと思っているのです。記録には残るが、記憶には残らないことになってしまうことを...
独断は続きます。私の記憶に残る馬とは、ダイタクヘリオス・ダイイチルビー・ケイエスミラクル、トウカイテイオー、ミホノブルボン、ノースフライト、マヤノトップガン、スペシャルウィーク、そしてグラスワンダー。三つどもえの熱戦を繰り返した3頭のマイラー。テイオーは自身のケガとの戦いだった。ブルボンは距離との戦い。ノースフライトは、サクラバクシンオーという希代のスプリンターがライバルだったが、マイルでは譲らなかった。天才田原が、逃げて有馬記念、追い込んでの天皇賞を勝利したトップガン。スペシャルウィークとグラスワンダーの直接対決は記憶に新しいところ。なぜか、タイキシャトルやサクラローレル、ナリタブライアンやビワハヤヒデなどは記憶に残っていません。記録からいったら、こちらのほうが優れていると思うのですが、なぜか思い出にはなりません。おそらく、テイエムオペラオーもこちらに含まれることでしょう。
競馬の楽しみは、馬券を買うこと以外にもあります。強い馬が強いレースをすることや、意外な馬があっと言わせるところを見ることです。そういったレースに巡り会えることは、馬券の勝ち負け云々とは別次元の楽しみです。そして、過去のレースを振り返ること、思い出に浸ることも、立派な楽しみだと思うのです。だからこそ惜しいかな、テイエムオペラオーは記憶には残らないだろうと思います。せめて強力なライバルがいれば...と考えるところですが、それは存在しなかったワケです。それが残念だと思います。
何度も言いますが、テイエムオペラオーは、とてつもなく強い馬だし、決して、運がよかったなどと思っているわけではありません。生涯、これほど強い馬を見ることは、おそらく困難なことだと思っています。